いつかの君たちの自画像 /Self-Portrait of You someday(Paraffin wax, LED lights, fixtures, 2025)
紀元前から人類は、 星を繋ぐことで星座を作り、特定の“ 見立て”を行い意味付けをしてきた。 光る星は、星間の遠さに応じて時間を含んだ光だ。太陽から発せられた光 が地球に反射し、様々な星へ向かう。もしかすると私たちに反射した光でもある、この光が150年後にたどり着くのはどこだろうか。
orm《いつかの君たちの自画像》は、 我が子が鏡に映る姿に対して見つめ笑いかける出来事を目の当たりにした体験から着想している。その遥か昔から脈々と続く鏡像という自己と他者を対象化し自己を認識 し始める前段階の自他が溶けあっているような感覚のありかを想像し、鏡のトンネルの中で無数の点を星座のように繋ぎ、映し出し時空間を物体化する。
それに呼応しながら吉田山《We need to put a branding iron on it for this time to make it more memorable.》が会場に焼き込まれていく。
Since B.C., humans have been connecting stars together to form constellations, which have a specific ‘look’ and meaning. The shining stars are lights that contain time, depending on the distance between them. Light emitted from the sun reflects off the earth and travels to different stars. orm's 《Self-Portrait of You someday》was inspired by the experience of seeing their own child staring and smiling at his reflection in the mirror. The work imagines the existence of the mirror image, a long-standing, unbroken line of mirror images, a sense of self and others dissolving into each other at the stage before we objectify the self and others and begin to recognise ourselves, and connects and reflects
countless dots like constellations in a mirror tunnel to objectify space-time. In response, Yoshiyamar's 《We need to put a branding iron on it for this time to make it more memorable.》will be burn in the building.














Photo : Naoki Takehisa
この度、展覧会『150年』を開催する。会場は、再開発によって取り壊しが決定している東池袋の一区画の建築群、全6棟の広大な敷地である。そこには戸建て住宅から町工場、複数のオフィスが入居する雑居ビルなどが密集している。それぞれ築年数の異なる建築群だが2025年には一斉に取り壊される予定だ。
本展は、巨大ビルを舞台に日本美術の現在地を描き出して大きな話題を呼んだ展覧会『惑星ザムザ』以来となる田中勘太郎と布施琳太郎のタッグによる共同企画である。
前回は布施がキュレーションを担当したが、今回は田中が総監督をつとめる。
本展タイトルの発案者でもある田中は、展覧会にかかわる作品設置の現場や展覧会の方針を監督する。さらに、それぞれまったく異なる空間を持つ6棟の建築群に大穴をあけた上で、独自の仮設通路を貫通させる。パラレル状の道、鑑賞導線によってバラバラの建築は壊されながら結び合わされて、ひとつの展覧会『150年』となるのだ。
このような舞台で開催される本展が相手取るのは、150年「前」や「後」ではなく、ただの時間の量としての「150年」である。それは人類にとっては先祖の顔、あるいは未来の発展といった現実がギリギリで想起できない時間量だ。
参加作家たちによる多様な作品を通じて150年は様々に現実化する。150年が建築群に受肉される。ここで提示されるのは、複数的な時間旅行である。その旅行は、今ここにある建築群の過去に束縛されない。各作家が準備しているのは互いに異なる150年のかたちなのだ。
気が付けば同時代性がたんなる権威づけの手段として使われる今日の現代アートに対して、複数の作家たちが「150年」という時間量を設置する本展は、芸術作品を通じて〈無から傷を生じさせることはできるのか?〉を問う。それは矮小化した現代アートとはまったく別の時間感覚に向けた賭けだ。ここに集積される異形の時間たちとの出会いによって来訪者のイマジネーションを暴走させること。それが本展の賭けであり、今もまだ芸術に残された可能性だと信じている。
Exhibition info
「150年」
2025.1.18 (sat) - 1.27 (mon)
アーティスト / Artist
大竹舞人, 小野まりえ, 加藤広太, 黒瀧紀代士, 島田清夏, 副島しのぶ, 髙橋穣
高見澤峻介, 田中勘太郎, 布施琳太郎, Houxo Que, 宮原嵩広, 横井菜々, 吉田山+orm
監督:田中勘太郎
脚本:布施琳太郎
企画:田中勘太郎 / 主催、立案:株式会社ユニーク工務店・リレーションシップ